光とともに - 3/4

泣き疲れてぐったりと座り込んでいる家康の頬を拭いながら口付けを落とし、三成はそのまま病衣の合わせ目に手を潜り込ませた。

「っ…み、三成っ!?」
「何だ、暴れると落ちるぞ」

そこはまだ病院の屋上のフェンスの外側だった。
狭いコンクリートの上でなんとか足場を保っている。

「な、何をするつもりだ!?」
「決まっているだろう。貴様を抱く」
「なっ…」
「拒むのか?」
「違う!」
「では何だ」
「いや…さすがにここでは危ないしせめて病室に…」

家康のもっともな意見に三成は小さく舌打ちをした。

「行くぞ」

ようやく二人はフェンスの内側に戻り、三成は家康の手を引いて階段を駆け下りた。
そうして家康の個室に戻り三成は乱暴にドアを開け閉めすると、その勢いのまま家康を投げるようにベッドに押し倒した。
伸し掛かっていきなり貪るようなキスを始める。

「っ…!んっ…!」

少しふっくらした家康の唇は触れるだけでも心地よいが、それだけでは足らずに柔らかな舌を絡めとり口内を荒らす。
息を継ぐのも大変なほどのキスをしながら簡素な病衣の合わせ目から手を差し込み、何かスポーツでもしているのかあの時代と同じくらい豊かな胸を揉むように撫で上げて家康の身体を跳ねさせた。

「ふっ…は、ぁっ…っ」

名残惜しい唇から離れて首筋を舌で辿り、鎖骨を痕が残るほど噛んだ。

「いっ…っ…み、みつ、なりっ」

何か言いたそうな家康を無視して病衣をはだけさせ、その胸に吸い付こうとしたが強く肩を押し返されて三成は苛ついた。

「ま、待ってくれっ…!」
「今度は何だ」

拒まないと言ったのに抵抗しようとする家康に、三成は本当に拒否の言葉でも言おうものなら無理矢理にでも突っ込んで嘆かせてやろうと思った。
だが、顔を赤くした家康が目を逸らしながら言ったのは。

「…こ、心の準備が…できていない…」

この期に及んで可愛らしいといえば可愛らしい台詞だった。
あの時代、二人はそういう関係などなかった。
だからこれが正真正銘初めての契りとなる。
三成は家康の頬を挟んで自分を向かせ、不敵に笑ってみせた。

「そんなもの、私に溺れていれば必要ない」
「っ…」

ただでさえ赤い顔を燃えるように真っ赤にして、家康は三成に溺れた。

 

「―――あっ!…っ、んっ…ぁ!」

結局十分な準備もせずに三成は家康の最奥に熱い楔を打ち込んだ。
足を大きく開かせて、サイドテーブルに何故か置いてあったハンドクリームをつけた指を数回抜き差ししただけで我慢できずに、三成ははちきれんばかりに膨らんでいた自身を半ば無理矢理に捻じ込ませたのだ。
突然の圧迫感と痛みに家康は声をだすこともできずに三成を受け入れ、それでもこの痛みと熱さはひそかに望んでいたものだと知った。
望んではいけないと浅ましい不埒な欲望に自分でも気付く前に胸の奥底に仕舞い込んでいたのを、今、その望みを叶えてくれる三成自身によって引き出された。
その身に埋め込まれた三成自身は、焼け付いた刀のように熱く鋭く、家康の信じられないほど奥までを貫いて悶絶させた。

「はっ…!あ、…ぁ、…んんっ―――!」

三成に求められて、家康のなかの熱く柔らかな粘膜は逃したくないというように三成自身に絡みつくのが自分でもわかった。
始めは痛く苦しいだけだったのに、三成に触れられて、三成に最奥を刺激されてあっという間に自分のなかが変えられていく。
何で濡れているのか、三成が動くたびにぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなるような卑猥な音をたてている結合部と、ギシギシと歪んだ音をたてるベッドがひどくいやらしいものに思えて堪らなく恥ずかしかった。
それでも、汗など似合わない三成が玉汗を浮かばせて必死な顔で自分を求めてくれるのがひどく愛しくて、家康はその首に回している腕に力をこめた。

「っ…みつ、なりっ…っ!」
「いえ、やす…っ」

名前を呼んで、名前を呼ばれて、家康は無意識に熱い咥内をきゅっと締め付けた。
三成の眉が歪み、ひと際深くまで突き上げられて家康は身体を震わせて熱を放ったが、三成は足を抱えなおすと少し角度を変えて更に奥を抉るように腰を叩きつけた。

「なっ、あっ、ああっ―――っ!」

達したばかりの敏感な粘膜を抉られて、家康ははしたなくとめどなく声を漏らして三成に溺れた。

「あっ、みつ、なりっ……ッ、―――みつなりぃ…っ!」

狂おしいほどに愛しさ溢れる彼の名を重ねて、ぞくぞくと全身を震わせながら三成の熱を離すまいと自らも腰を浮かせて足を絡ませた。
偽善の色によがり狂うなと言われたが、今なら、おまえになら、よがり狂ってもいいだろう?と。

「っ…いえ、やすぅ…ッ」
「んんっ―――っ!」

三成が腰を進めながらキスをしようと体勢を変え、熱い刃は家康のなかの今までと違った壁に当たり新たな刺激が生まれた。
キスで口を塞がれて苦しいのもあって家康の蕩けるように熱く甘い粘膜は三成をきつく柔らかく締め付けて、ついに三成はその自らの証を家康の掻き出せないほどの最奥に刻みつけた。

「…くっ…」
「―――ぁぁっ!」

三成の熱を受け止めた家康もまた自らの腹の上に二度目の精を放ち、びくびくと収縮して三成から更に搾り取ろうとなかが蠢いていた。
三成は力尽きたようにぐったりと家康の上に倒れ込み、淫らに貪欲に収縮を繰り返す家康のなかで何度か吐き出した。
二人の、壮絶な戦いのあとのように体力を奪われて途切れ途切れに綴る息が室内に響く。
あたたかな陽が取り入れられたその空間は、今は光に満ちていた。

他には何もいらない。
互いさえあればここは至福の世界。

笑いあって、キスを交わした。

東照の陽は西をも照らし、
西凶の陰は天日を手に入れた。

400年前に分かたれたふたつは、そうしてひとつとなって彼らだけの世界を成したのだった。

 

(→次ページ、蛇足)