闇に眠りし夢の間に間に - 2/3

 

着実に天下への道を進める豊臣軍は、その日も反乱分子を抱える村を落とした。
十六夜月も高く涼やかな風が頬を撫でる頃、三成はいつものように家康の部屋を訪れた。
だが三成が障子を開けると、背を向けて布団の上に座り力なく項垂れている家康は明らかにいつもと違っていた。
苛ついて家康の腕を取り自分の方を向かせると、頬に光るものがある。
そして僅かに見開かれた瞳は、歪み、ただ哀しみを、―――絶望とは違う。恐らくそれは哀しみというのだろうと三成は思った―――湛えて濡れていた。
家康は、見られたことを隠すように俯き小さく呟いた。

「…いやだ…」

そんなにか細い声を、三成は初めて聞いたと思う。

「今日は、いやだ…」

それは初めての拒絶の言葉だった。
三成はその弱々しく紡がれる拒絶に苛立ち、家康の身体を乱暴に褥に押し付けて腕を捻りあげる。

「っ…」

何故今日はこんなことを言うのか。
思い当たることと言えば昼の戦だった。
あれは戦とも言えないかもしれない。
秀吉の命により、三成と家康はある村の殲滅を行った。
三成が女子どもたちが隠れていた小屋を発見してそれらを全て斬滅した後、後ろには顔色を失った家康がいた。
家康は何も言わなかったが、ただその両の拳がきつく握られ震えていたのは目に映った。
いつもと違ったのはそれだけだったはずだ。
それが何だ。秀吉様に盾突く者は女子どもといえど斬り捨てるのみ。

「貴様は何も知らない。あれらの弱き者たちの絶望を、私の絶望を!何も知らずに絆などという腑抜けた甘言を綴る貴様は生まれながらに家臣たちに守られて生きてきたのだろう!!」

これは何も知らない。
絶望を知らない。
だからこんなにも真っ直ぐに淡い光を湛えて自分を見上げる。
穢したい。地に這わせて絶望と恐怖を植えつけて二度とその光を纏うことのないよう閉じこめてしまいたい。
何も言わずにただ哀しみと、憐みともとれる琥珀の瞳で見上げてくるのを、三成はひどく壊したいと思った。
夜着を割いて足を開かせればそれでも抵抗したから顔を殴った。
鈍い音がしたあと、部屋には静寂がはしる。
三成が家康を殴ることじたいは初めてではない。
軍議の最中や鍛練している広場や、部屋や廊下で。
だが、閨において殴るのは恐らく初めてだった。
三成は正直覚えてはいない。
抵抗するのを諦めたらしい家康は殴られたままに顔を背けて静かに目を閉じてその時を待っているようだった。
この男は簡単に諦める。
恐らく、自分以外の誰かが同じことをしても抗わずにただその身を差し出すのだろう。
そう思うとひどく苛立ち、三成は家康の帯紐を解くとその身体を乱暴に反転させて後ろ手に縛りあげた。
頭を敷布に押し付け、腰だけを高くあげさせる。
屈辱的であろうその姿勢にも家康は無言で耐えてみせる。
夜着を捲り上げて尻に膏を垂らすと、冷たさにかびくりと震えた。
それを冷たい目で見下ろして一気に怒張を捻じ込んだ。

「―――っ!」

引き攣った声が漏れただけで抵抗の意思は見られない。
慣らしてはいないが膏のおかげで簡単に最奥まで呑み込んだそれに、三成はまた苛立つ。
奥底から湧き上がって仕方ない怒りを全てぶつけるように凶暴に家康の柔らかな部分を犯す。
熱く絡みつく粘膜に、この身体がどれだけ淫らであるかを知らされて猛りを突くことを止められない。

「っ!…―――ぅっ…」

快楽を認めたくないというように声を押し殺すのも気に食わない。
こんなにも自分の熱を呑み込んで奥へと誘いこんでいるのに、額を敷布に押し付けて耐えるだけの態度が気に食わない。
何故この男は始めから自分を受け入れたのか、公の場ではむしろいくらでも反する意見を説いてくるくせに、何故閨ではこんなささやかな抵抗を見せつつもただおとなしく自分に従うのか。

「――――ぁ!」

奥深くに子種を吐けば、家康はびくびくと全身を震わせてまるでそれを吸収するかのようになかも収縮させる。

「は……ぁ…」

三成は、自らがしていることとはいえ男に蹂躙されても嘆くことをしないその哀れな姿に、どうしようもなく怒りを感じる。
家康の背には大小問わず傷がいくつもあった。
愚かなこの男のことだ。ただ背後を取られたのではなく、誰かを庇ってつけた傷もあるのだろう。
その古傷のひとつに指を這わせるとびくりと身体が跳ねた。
突っ込んだままの自分にもそれが敏感に伝わる。
自分ではない、誰かがつけた傷。
三成はその古傷に爪をたてた。

「っ…」

低く呻いたのを心地よく思い、その傷を抉るように爪で引っ掻いて赤い血を流させた。
これに傷をつけていいのは自分だけ。
二筋、傷を抉って血を流させても家康は何も言わずに耐えるだけ。それどころか三成を呑み込んだままの粘膜を浅ましく蠢かせてさえいる。
三成は熱を埋め込んだまま家康の身体を反転させ仰向けにした。
だがその陽光の瞳は少しも穢れてはいなかった。
当然絶望など微塵も含んでいない。
ただ、真っ直ぐに三成を見つめて、あろうことか慈愛の笑みさえ浮かべている。

「っ…貴様は…貴様は何なんだ!何故絶望に沈まない!何をすれば傷をつけられる!…何故笑う…私に何を求める!」

張りつめられたままの怒張を引き抜いてまた一息に最奥を抉った。

「―――!」

琥珀が見開かれて雫が落ちる。
だがそこには三成に対する恐れも否定も、絶望もない。
あるのはただ…。