初めての - 3/4

 

ああ、もしかして―――
家康は、着物越しにも熱い三成の体を感じて、そういうことかと合点がいった。
初陣で血を滾らせているのだろう三成の頭をもう一度宥めるように優しく撫でた。
自分は構わないが、三成はどうだろう。
自分は経験もあるし身体などどうされようと構わないが、三成にとっては恐らく、少なくとも衆道は初めてだろう。
相手が誰だか認識していて行為を起こそうとしているのか。
適当な相手を見つけられずに自分のところへ来たのか。
足元が覚束ないほど酔っているのだ。明日には記憶がないかもしれない。

「…三成、わかっているのか…?」

家康が柔らかく問えば、三成は顔を上げて真っ直ぐに琥珀の瞳を射抜いた。

「当然だ」

言ったと同時に家康の単衣の裾から手を入れた三成は、普段は見ることのできないその肉付きよく食らいつきたくなる脚を大きく開かせた。

「なっ、三成!いきなりは無理っ―――!!」

何の準備も施されていない奥に三成の怒張が無理矢理ねじ込まれ、いくら慣れた身体とはいえ長いこと経験していなかったこともあり鈍い痛みと圧迫感に息が止まりかけた。

「―――はっ…ぁ、!」

なんとか息を継ごうとする家康だったが、三成は構わずに半分ほど引き抜いてまた強引に奥を突いた。
刀で串刺しにされたかのように、硬く長い三成の熱棒に最奥を抉られて意識が飛びそうになる。
ぎちぎちと締め付けている結合部は既に傷ついていて、三成の侵入を助けた。

「ぁ…、くっ…!ん…っ!」

三成自身も無理な侵入は辛いだろうに、何かに追われるように必死に家康の身体を開いた。
三成がなぜ、自分の寝所へ来たのかはわからない。
けれど、熱に浮かされているとはいえこんな風に必死に抱かれては求められていると勘違いしそうになる。
三成に抱かれるのは構わないとつい先刻は思ったが、実際繋げられてみてやはり失敗だったと思った。
もはや跳ね返すことなどできないが、それでもまだ幾ばくかの葛藤があった。
自分と繋がっては三成が穢れてしまう。
戦場に立つ彼を見て、血に濡れる彼を見て滾ったのは自分の方だった。
情欲に濡れていても真っ直ぐに透き通った翡翠の瞳に映るのは、浅ましい自分。
家康は目を逸らして唇を強く噛んだ。
その姿に、三成は抵抗していると捉えたのか家康の膝裏を抱えて胸までつくほどに体を折り曲げて上から激しく奥を暴いた。

「あっ!あ、…だめ、だっ…!―――んぅっ!」

三成の凶暴なまでの激しさに急速に高められた家康の身体は、三成を求めて艶めかしく内側を収縮させる。
ただでさえ三成の純粋な魂に魅かれていることを自覚しているのだ。
まだ出会って数ヶ月だが、三成の清楚なまでの純粋さと美しさに心惹かれていた。
これからいくつもの戦場を駆け抜けいくつもの命を屠ることになっても、きっとその美しさは変わらないだろう。
そんな彼を、この穢れた身体で受け止めるのはひどく心が痛い。
既に内側は三成の形を覚えて自分の意思ではないところで彼を求めている。
それでも。
自分は彼に相応しくないとわかっていても。
必死な形相で抽送を繰り返すまるで子どものような三成に、手を伸ばしたくなった。
口付けたくなった。
だが、一度その背に手を回してしまえば、口付けてしまったら、もう戻れなくなってしまうだろう。
今は豊臣の元にいても、秀吉の理想と自分の理想が違えることがあればその時はどうなるかわからない。
三成は秀吉を崇拝している。三成が秀吉の元から離れることなどは天地がひっくり返っても有り得ない。
もし、この先敵対することがあった時、覚悟できるのか。
豊臣と、三成から離れなければならなくなってしまった時、彼を傷つけなければいけなくなってしまった時、それは耐えられるのか。
彼の憎しみを、受け止めきれるのか。
自分にとって成さなければいけないことは変えられない。
それもまた、望まれてなったのではなく、自分で決めたこと。
だから、ただひとつを欲しいと願うことさえ赦されないこの身を嘆くつもりはない。
ただ、その名前を呼んだ。
愛しい男の名を掠れる声で呼べば、埋め込まれた彼の雄が質量を増した。

「ひっ…ぁ!…みつ、なりっ…ッ!」

ひと際強く抉られて最奥に注がれた子種を一滴も逃さないように粘膜が浅ましく収縮する。
涙に濡れた頬を、三成が舐めとるように唇を寄せてきた。

ああ、だめだ…それ以上は……頼むから…わしを、ころさないでくれ……

それからまた三成が動きを再開しても、最後まで家康の腕は三成の背に回されることはなかった。

* * *

冬の遅い朝。
東側にある家康の部屋に清廉な陽が差し込み、ひとつの寝具で夜を共にした三成の銀の髪が輝いていた。
寝息もたてずに眠っている三成を見つめて、家康はどこか耐えるような笑みを浮かべた。

「…お前は…美しいな…」

眠る三成のまぶたにそっと口付けを落として淡く微笑んだ家康は、太陽の昇る側の障子を開けて静かに部屋を出た。

 

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