今日は石田三成の初陣だった。
大広間では祝宴が開かれ、三成は秀吉や半兵衛からも労いの言葉をいただいていた。
その様子を横目に、家康はひとり、自分の屋敷へと戻っていった。
三成は確かに剣技にも優れていて実力はあるのだが、その性格に少し難があった。
直情すぎる三成を補佐するよう命を受けていた家康はその勇姿を目に浮かべる。
誰よりも秀でている速さ、美しい太刀筋、返り血を浴びても瞬きすらせず次の敵を薙いでいく無駄のない動き。
三成には少し遅い初陣となり、本人も一日でも早く秀吉の役に立ちたいと毎日のように言っていた。
彼の実力は申し分ないのだが、秀吉も半兵衛も今まで温存していたのはよほど三成を大事にしていたということだろう。
いくら実力があっても彼の直情すぎる動きでは一歩間違えれば逆に討たれてしまう可能性も大きかった。
そこに家康という年も近く、自身も三成をも抑えることができる青年が豊臣軍に加わったことは好機だっただろう。
自室でひとり手酌で酒を嗜んでいた家康は、ふいに障子の向こうに気配を感じ、だが警戒することなくそちらに目を向けると三成が部屋に入ってきた。
「三成?どうした、おまえの祝宴の最中だろう?」
穏やかに声をかければ、足元が危うい様子の三成は俯いたまま家康にしなだれかかってきた。
それを受け止めて目を細める。
普段はこんなになるほど飲むことなど有り得ない三成だったが、今日はさすがに秀吉や半兵衛からも絶え間なく注がれ断ることなど到底できなかったのだろう。
家康は、自分の首元に顔を埋めている三成の銀の頭に手を乗せた。
こんなことなどしたこともないが、生きて帰ってくれてありがとうという気持ちを込めて優しく撫でた。
普段なら手を振り払われるだろうが、今はおとなしく自分に寄りかかっていてくれるのがどことなく面映ゆくて小さく微笑んだ。
身じろいだ三成が体重をかけてきてそのまま押し倒される。
“あの”三成にまるで甘えられているようで家康は笑みを一層強くした。
しかし、つい数時間前に戦場を駆け抜けていたのが嘘のような優しい時間に思えたのはそこまでで、三成の行動によって雲行きは変わった。
「ッ…三成っ」
柔らかな首筋に歯を立てられ薄く皮膚が破られて赤い血が滲むほどに噛まれたのだ。
2ページめ→家康さんも初めて(明るめ)
3ページめ→家康さんは過去に男経験がある(切なめ)。*経験があるためそういう前提の表現も多少あります。