私は株式会社豊臣経営企画部経営企画課企画チーム石田三成。
就職活動中に知った秀吉様の経営方針並びに社会貢献についてひどく感激し、ぜひこの方にお仕えしたいと臨んだところ無事入社することができたのだ。
半年間の社内研修を終える時、最後の課題として副社長の半兵衛様より与えられたお題は「秀吉(様)のために何ができるか」。
実際に一番使えそうだと認められた者の提案は採用されるというそれに私は認められ、ここに「秀吉様ファンクラブ」を立ち上げることとなった。
社内システムの掲示板で募ることにしたのだが、「シャイな人が入りにくいかもしれないから匿名でね」という半兵衛様のご助言によりそういう設定にしたものの、1ヶ月経った今もメンバーは私の他に1人しかいない!!
せっかく秀吉様半兵衛様に認められ最初の仕事だというのにだ!
活動のほとんどはまだ社内掲示板でのチャットだ。
(本業の仕事に影響しない程度になら就業中に参加することも許されている)
秀吉様命 『まったく!社内の連中は何故参加しないのだ!何のためにこの会社に入社したというのだ!』
アオイ 『まあまあ落ち着いてください、m、秀吉様命殿。会社に属しているからと言って皆が皆秀吉殿に共感したり力になりたいと思っているわけではないと思いますよ』
秀吉様命 『なんだと!?では何故入社する!?貴様もそうだというのか!?』
アオイ 『ワシは…もちろん秀吉殿が作ろうとしている未来に興味がある。そうなってくれればいいと思っているからここにいるが、大抵の社員はほとんどが生きるため、もっと言い方を変えれば金のために働いているだけだろう』
秀吉様命 『なん、だと!?そんなもののためにここにいる奴らは毎日通っているのか!?』
アオイ 『それはそうだろう。金が無くては生きてはいけない。ここは初任給も高かったし努力次第でどんどん認めてくれるようだが、何も秀吉殿個人のためにそれをしているわけではない』
秀吉様命 『貴様てん…秀吉様を愚弄するのか!』
アオイ 『だからそうではなくてだな。そうだなぁ、だったらもっと秀吉殿のイメージアップに繋がる何か企画をしたら良いのではないか?』
秀吉様命 『何だそれは!』
アオイ 『ワシも今すぐには思いつかないが…』
秀吉様命 『だったらこの文字を打つ作業はいちいち面倒で仕方ない!今晩会えるか』
アオイ 『え?』
秀吉様命 『何だ、先約でもあるのか』
アオイ 『約束はないが…』
秀吉様命 『歯切れが悪いな。私とは会いたくないということか』
アオイ 『そうではない!そうではないんだm、』
秀吉様命 『では何を懸念する。貴様が言っていたことは嘘だったのか!?文字では秀吉様のためと言いながら(作者注:一度も言っていない)私に会えば見破られるとでも言うのか!?』
秀吉様命 『おいどうした、何か言え、落ちたのか?』
アオイ 『あ、いや、いるぞ』
秀吉様命 『18時半にビルの前だ。拒否は許さん』
アオイ 『わかった。では政宗が呼んでるから失礼する』
秀吉様命 『あお、』
アオイが退出した。
どこの部の者かは知らないが、私の秀吉様論についてこれる唯一と言ってもいい存在だと思っている。
この秀吉様ファンクラブは役職のない者だけが参加できると限られているから、何十年も勤めている者ではないことは確かだ。
ああ、秀吉様について語ることができるとは何という喜びだ。
そうして指定した時間にビルの前に降りたのだが、そういえば私は奴が誰なのかもどんな装いなのかも知らない。
私はチャット上ではHNを使っているが、主催者として名前は公表している。
だが顔までは知られていないだろう。
どうすれば良いかと思っていた時、一人の男が手を振って私に近づいてきた。
「みつ、…あ、えーっと石田さん…?」
「そうだが」
「ワシだ、アオイだ」
「ああ、貴様が…何故私のことがわかった」
「覚えていない…か。ワシら同期なんだ。一緒に研修していたんだぞ?」
言われてみれば見たことがあるような気はする。
…ああ、あの妙に馴れ馴れしくてお節介で誰にでも愛想を振りまいていた筋肉バカか。
「ん、今、筋肉バカとか思っただろう?」
そう言って奴は自分の胸を指差した。
確かに私は今胸を見ていたが。
研修中に一緒に風呂にも入ったことがあって、その時に見た奴の大胸筋が素晴らしかったのを思い出したのだ。
「ああ、徳川、だったか」
「おお覚えていてくれたのか!ありがとう!研修中は断られてしまったがワシのことは家康でいいぞ」
「仕方ないな、馴れ合うつもりはないが私も三成でいい」
そう許可を出すと、家康…は太陽のような笑顔を私に返した。
「では私の家でいいか」
「え!?」
外食はしないし店の喧騒の中にいるのが煩わしい私は至極当たり前のことを言ったのだが、家康はかなり驚いた顔をした。
「何か問題があるか。私は外の店が好かん」
「ああ…そ、そうだな。三成がそれがいいならそうしよう」
そうして私たちは電車で3駅移動し、駅前のスーパーで適当な惣菜と酒を買った。
私は何もいらなかったのだが、家康がちゃんと食べなきゃだめだとかなんだかんだと言いながらカゴに入れるものだから袋2つ分もの買い物をしてしまったのだ。
研修の時もそうだったが何かと私の行動に口を出してくるうるさい奴だ。
1つずつ買い物袋を持ち(家康が酒が入っている方の重い袋を持って笑ったから私は軽い方を持った)、私のマンションの前で外のオートロックを開錠していると家康はマンションの上層を見上げて口を開けていた。
「こんな立派なところに住んでいるのか…」
「半兵衛様が薦めてくださったのだ。貴様も家賃は補助がでているだろう?」
「あ、ああ…そうだな」
エントランスを抜けてエレベーターで最上階を目指す間、家康はどこか落ち着かない風だった。
エレベーターを降りるとその階には私の部屋しかないことにも家康は驚いていた。
「いちいち驚くな。貴様も同じようなものではないのか」
「え?いや…ワシは電車で1時間はかかるし2階建ての木造アパートだからなぁ。三成がこんな高層マンションに住んでいるなんてそれは驚くさ」
よくわからないがどうでもいい。
部屋に入るとまた家康は阿保のように口を開けて突っ立っていたが、私は構わずにスーツの上着をソファに放り投げキッチンに水を注ぎにいった。
「飲むか?」
「ああ、ありがとう」
ふと私は不思議に思った。
この部屋に誰かが来たのは最初に引っ越し祝いをお持ちくださった半兵衛様以外誰もいない。
初めての客に私は水を勧めたわけだが、私はそういう人間だったか…?
私がくだらないことを考えている間に、家康はスーパーの袋をリビングのテーブルの側に置くと、私が放り投げたスーツの上着を手に取りきょろきょろと見まわしてそれをハンガーにかけた。
勝手に触られたことには特に異論はない。
それから予定どおり、秀吉様の素晴らしいお姿を社員どもに理解させるため二人でアイデアを出し合った。
お互いに何か言ってはそれはないそれはどうだろうなどとひとつも一致することはなかった。
酒のせいもあるのか、後半のほとんどは私が一人で秀吉様について話していたように思う。
それを家康は笑顔で聞いていた。
社内で秀吉様の話をしようとすると誰でもすぐに逃げていくのはわかっている。
何故奴らは秀吉様を敬わないのだ!社員だろう!
秀吉様もそんな奴らは即刻クビにしてしまえばいいのに、半兵衛様はそうはなさらない。
入社させていただいた恩義も忘れぷらぷらと飲み会などという戯言を交わすだけのくだらない交流も許しはしない!
そうだろう!?家康!
「み、みつ…なり…?」
気付くと何故か家康が私の下にいた。
正確に言えば、床に仰向けで寝転がっている家康の上に私が伸し掛かっている。
酒のせいなのか知らないが家康の主張の大きい瞳はわずかに潤んでいて頬も赤らんでいる。
いつの間にかネクタイは外していていくつかのボタンも外され、わずかに鎖骨が見えている。
その下には綺麗に盛り上がった胸。
私はその胸に手を乗せた。
「三成!?」
慌てるような家康の声を無視して、私は両手でシャツの上から胸を掴んで緩く揉んでみた。
「っ…!三成っ、何をするんだっ」
「気にするな。私がちょっと気になっただけだ」
「気になっただけってお前…んっ」
家康が眉を寄せて耐えるような表情をしたのが心地よかった。
私は家康のシャツを左右に引き裂いてボタンを弾けさせた。
「!み、三成!?ちょっ―――あっ!」
シャツの下から現れた乳を口に含んでみる。
これは酒よりも何よりもうまい。
私は反対側の乳を指で弄りながら口に含んだ方は吸い上げるように舐めた。
「んんっ…!ぁ…っ、みつ、…なり…っ!」
乳を弄っていた手を下げていき意外とそこは柔らかな脇腹を撫でてベルトに手をかけた時―――
「やめろ!!三成っ!」
「―――ッ…」
思い切り蹴とばされた。
私は素早く立ち上がってもう一度家康を押し倒した。
両の指を絡めて床に押さえつける。
そうして見下ろした家康は、なんというのか、陳腐な言い方をすればいやらしかった。
頬を赤く染め、大きな金色の瞳は潤んで私を見つめ、少し乱れた前髪が額に降り、さらけ出した胸は呼吸を継ぐのに上下し濡れた乳が光っている。
私だけを見つめる瞳。
私だけに開かれた身体。
泣かせたい。
素直にそう思った。
私はそれを実行しようと、
「待ってくれ!三成!」
「何だ、邪魔をするな」
「い、一応聞くが…お前は何をしようとしている…?」
「貴様とまぐわう」
「っ…まぐわうってお前…どうしてそういうことになったんだ?」
「知らん。貴様が悪い」
「なっ、ワシが何をしたっていうんだ」
「往生際が悪いぞ、家康。おとなしく私に抱かれろ」
「ッ……」
何かと口答えをする家康をじっと見つめれば、その愛らしい唇はへの字を結んだ。
その唇に向かうべく身を低くすると、また家康がじたばた暴れだして私は押さえつけている力を強めた。
「三成!せめてこういうことは手順を踏んでだな…」
「手順?」
「そうだ、例えば…まずは社外で会うとか」
「会っているだろう」
「社外で飯を食べたり秀吉殿以外の会話をしてみるとか」
「しただろう」
「て、…手を繋ぐ…とか」
「繋いでいるが?」
「う…ならば……く、口吸いをするとか…―――んっ!」
私は望み通り家康の唇を塞ぎ、舐めまわし、舌を絡め、吸い上げ、舐めまわした。
「はっ…ぁ…っ……ぁッ…」
唇の端から唾液を垂らして息を乱している家康を見下ろして言った。
「したぞ」
「ん…っ、ああ、もうわかった!ワシも腹を括ろう。抱いてくれ、三成」
「元より貴様の許可は求めていない」
家康のなかはひどく狭く熱くて最高に良かったことをここに述べておこう。
おわり?