「三成っ、それはいくらなんでも痛いぞ⁉︎」
三成特有の羽織の背中を引っ張りじたばた暴れてみるが、血を舐めとるように舌を這わされてびくりと身体が震えた。
「っ…みつ、なり…?」
恐る恐る名前を呼ぶと、三成がゆっくりと顔をあげて見下ろしてくる。
ああ、これはいけない。
三成の翡翠の瞳が情欲に滾っていた。
家康はあまりそういう気になることはなかったが、戦のあとは血が滾る。
三成も初めての戦場に呑まれてしまったのだろう。
どうするべきか、今更誰かを呼ぶのも憚られたし、それに今そう思った瞬間心の臓に針を刺されたように痛みを感じた。
今のは何だ…思考を巡らせようとした瞬間、三成の端正な顔が近づいてきて、唇を塞がれた。
「!…ぅ…っ」
嫌ではない、嫌ではないがこれは許されるのか…
このまま三成の熱を受け止めていいのか迷っていた家康だったが、口内を荒らされ布の上から強く胸を揉むように掴まれて思考が止まる。
当然こういった経験がない家康は、三成の性急な動きに体も心もついていくことができずただ翻弄されていた。
「―――はっ!…三成っ…!待て、ワシだぞ⁉︎わかっているのか…⁉︎」
ようやく激しい口付けを解放され慌ただしく息を継ぎながら家康が問うと、三成はぴたりと動きを止めた。
なんだ、正気に戻ったか…?
と安堵しつつどこか残念な気を感じた家康だったが、次の瞬間絶句した。
三成が顔をあげて真っ直ぐに家康を刺し殺すかのように射抜いている。
「当然だ」
飢えた獣の目をした三成に、家康はもう後戻りなどできないことを悟り身体を震わせた。
戦場での命の取り合いよりもよっぽど血を滾らせられる。
三成の獰猛な瞳に見惚れごくりと喉を上下させている間に、三成は家康の単衣の裾から手を入れ肉付きの良い脚を開かせた。
さすがに驚いた家康が三成を押し返そうとするがその瞳に魅入られたからかあまり力が入らず意味をなさなかった。
「み、三成!ちょ、まっ―――!!」
何の準備も施されていない奥に三成の怒張が無理矢理ねじ込まれ、あまりの痛みと圧迫感に息ができなかった。
三成の先走りの液だけでは潤滑の役には立たず、三成の方も相当きついであろうに彼は滾った血を湧き上がらせるように乱暴に突き始めた。
「あっ!…ッ、んっ…ぅ…!」
息を継ぐのに精いっぱいの家康は、三成の首にしがみついて喉を反らせた。
結合部にぬるりとした感触を感じ、傷ついたことを知る。
それは潤滑油の代わりとなり、三成の溢れる愛液と混じって三成が腰を進めるたびにぐちゅぐちゅと音をたてていた。
三成とこんなことになるなんて。
そう思いながらも家康は自分の魔羅も反応していることに気付いて途端に恥ずかしくなった。
三成に奥を暴かれて感じている。
なんて自分は浅ましいのだろうと、三成に気付かれたくなくてしがみついている腕に力を込めた。
それは逆に三成との距離を縮めることになり家康のものが三成の腹にあたって擦れ、その刺激でなかの粘膜は三成を締め付けることになった。
「ッ…!」
三成は翡翠の瞳を透明のまま、薄く微笑んだ。
その表情に、家康はまた自らの意思ではないのに奥を締め付ける。
三成は何か言いかけたがもう一度艶のある笑みを浮かべると、家康の脚を抱えなおして激しく突き上げた。
「!!―――ッ、あっ―――!」
声にならない悲鳴をあげながら激しく揺さぶられて限界が近いことを知り、切なげに一度、三成の名を呼んだ。
ふたりで同時に吐き出し、家康は自身と三成の腹を汚し、三成の子種は家康の最奥に解き放たれた。
三成がぐったりと家康の上に倒れてくるのを、家康は乱れた息を整えようとしながらもその銀色の頭を胸に抱いた。
二人の乱れた息づかいだけが響く静かな夜。
否、遠くには人の気配や喧騒があったが互いに互いの存在しか見えていなかっただけのこと。
ようやく息も整いかけた頃、おもむろに上半身を起こした三成は家康の体を反転させた。
「え…?」
まさか、と思った瞬間には後ろから突き入れられていた。
* * *
翌朝、家康が目を覚ますと三成の姿はなかった。
敷布は冷たく、彼が去ってからだいぶ時が経っているのだろう。
ふと寂しそうな笑みを浮かべていたことには家康自身気づいていなかった。
ゆっくりと上半身を起こすと腰に鈍い痛みが走る。
「いたた…」
腰を片手で押さえながら静かに息を吐く。
昨夜は結局何度果てたことか。
欲に薄そうな三成があんなにも激しく何度も自分に欲望を叩きつけるとは。
繰り返し名前を呼ばれたことを思い出して頬が熱くなる。
自分も彼の名前を掠れた声で何度も呼んだ。
あれではまるで…自分の考えにふるふると頭を振った。
堪らなく恥ずかしくてなって俯くと、乱れた単衣の裾からのぞく足の間に見えたのは、赤黒い血の跡だった。
その跡にしばし絶句して、それから顔から湯気が出そうなくらい真っ赤にして両手で顔を覆った。
「…これは、参ったな…」
どうしたものか、と物思いにふけようとした時、障子の向こうから声をかけられた。
「家康、起きているか」
三成だ。
ああ、どうしよう。こんな情けない顔なんて見せられない!
しかし無視するわけにはいかず、三成がわざわざ訪れるくらいなのだから何か重要な呼び出しかもしれない。
家康は乱れたままの単衣を直してから返事をした。
「ああ、起きているぞ?」
三成が障子を開けると、家康は満面の笑みで迎えた。
だが、三成は開けた瞬間に何か恐ろしいものを見たかのように目を見開いて叫んだのだ。
「貴様ぁ!その乱れた髪をなんとかしろおぉぉっッ!!!」
ぴしゃんっ!と勢いよく障子が閉められ、家康はぽかんとそれを眺めた。
確かに起きたばかりだし昨夜はあんなことがあって髪は乱れているかもしれない。
何故そこまで大袈裟に叱咤されたのかはわからないが、もしかしたら秀吉に呼ばれる用向きでもあったのかもしれない。
昨日のことが嘘のようにいつもどおりの三成に家康はふふっと笑いながら箪笥の引き出しから髪を整える道具を取り出し、それを髪に塗りつけていつもの雰囲気を取り戻した。
ついでに恥ずかしい寝具を軽く畳んで壁際に寄せておく。
三成を待たせている障子を自ら開けて、
「三成、できた、っぞ!ってお前!何でそこに突っ立っているんだ!」
障子のすぐ前で見えない部屋の中を見るように待機していた三成の顔が目の前に現れて家康は思わずのけ反った。
のけ反ったまま停止している家康をじっと見つめた三成は、その手を家康の背中に回し、体勢を元通りにした。
妙に優し気な三成の行動と触れられたことに驚いた家康はひそかに鼓動が早くなっていたが、それを悟られないように踵を返して部屋の中央に戻った。
そしてゆっくりと腰を下ろしてあぐらをかいたのだがその時、朝方まで散々注ぎ込まれた三成の子種が奥から腿を伝い、あまりの気持ち悪さに低く呻いてしまった。
だがそれも三成には気付かれなかったようで、三成は家康の前に正座をして真っ直ぐに見つめてきた。
何だろう…三成の様子に落ち着かない家康だったが、微塵も表には出さない。
三成は至極真摯な瞳で言った。
「昨夜はすまなかった」
「!」
み、三成が謝った!ワシに!
三成はそもそも素直な性格だ。
思ったことはすぐに口に出すし自分に非があると認めれば当然謝罪することも厭わない。
まさか昨夜の謝罪があるなどと思っていなかった家康は面食らって、困ったような笑顔を見せた。
「ははは、なんだ三成。わざわざそんなことを言いに来たのか?いやぁおかげで腰が痛くてかなわん。できれば次はもう少し優しく頼むぞ」
謝罪を受けた家康は許すとも許さないとも言わず曖昧に返した。
なにしろ始めこそ三成の突然の行動だったが、最終的には自分も求めていたのだ。
謝られることじたいがおかしかった。
「ッ…」
三成は小さく呻き、勢いよく立ち上がると壊しそうなほど激しく障子を開けた。
そして肩越しに振り返り、
「貴様の願いどおり次は優しくしてやる!首を洗って待っていろ!」
そう言い放って颯爽と立ち去って行った。
何を言われたのか瞬時には理解できなかった家康は、開けっ放しにされた障子の向こうを呆けた顔で見やって三成の言葉を反芻し、徐々に顔を赤く染めた。
「……え…?」
それから三成の後ろ姿を思い出して更に赤面した。
彼の耳が赤くなっていたような気がする。
あの三成が。
「…これは、本当に、困ったな…」
片手を額にあて、くくっと笑った家康は、この戦乱の時代の中でひどく楽しそうだった。