三成とは高校の入学式の日に再会した。
校舎の前で三成の後ろ姿を見つけた時、ありふれた表現しかできないが本当に心臓が止まるかと思った。
幼少の頃に400年前の記憶がよみがえっていたわしは、本当に、本当に、言葉では言い表せない感情が一気に溢れそうになったが、三成が振り返って目があうと、もうだめだった。
崩れ落ちそうになるわしの手を取った三成にそのまま手を引かれ、初めて訪れる場所だからどこに何があるかなんてわからない学校の敷地内を三成は知っているかのごとく真っ直ぐに突き進んで何かの部室に使われているだろう小屋に連れ込まれて…
埃まみれで汗くさくて薄暗い小屋のなかで、抱き合った。
423年ぶりの三成の熱に翻弄されて入学式のことなんて忘れて、当然出席しなかった。
優等生で通してきたはずのわしがそんなことを『そんなこと』と捨てられるくらいどうでもよかったんだ。
だって三成が目の前にいる。
三成が…生きて、わしの前にいる。
記憶がよみがえってからずっと思っていた。
きっと同じ時を生きていると何の根拠もなく確信した時、会いたい、会えなくてもいい、会ってはいけない、会う資格なんてわしにはない、三成がしあわせでいてくれたら、それでいい。
そう思っていたはずなのに。
三成に激しく揺さぶられながら切羽詰まったように名を呼ばれて、過去の罪も忘れてこの瞬間が永遠に続いたらいいのに、なんて願ってしまった。
真新しい学生服は埃まみれでおまけに人には言い難いシミまでつけて、入学式をすっぽかしたせいでふたりして担任に呆れ顔をされてくどくどと説教をされて、それでもわしは何だか嬉しくて楽しくて笑ってしまっていたようでまた担任に説教をされて。
三成は三成で睨むように担任を見ていたものだからそれはそれで説教をされて。
大変な高校生活初日だったけど、ああ、しあわせだな、なんて思ってしまった。
そうしてあろうことか、学生の身分でありながら今は三成とふたりで暮らしている。
わしも三成もちょっと遠くの町から通うことになるから下宿を借りていた。
けど、その下宿代と安アパート一間をふたりで借りることを比較した時、同じくらいじゃないかと、互いに親には迷惑をかけることになったがありがたくも無事に理解も得られてふたり暮らしを始めることができた。
風呂なしトイレ共同は何かとちょっと不便だったが…出逢えただけではなく三成と共にあれるなんて、これ以上の贅沢はない。…三成といるからこそ風呂なしが不便なんだが…
そういったわけでふたり暮らしを始めて2か月ほど経った今日は日曜日だ。
昨夜も三成がなかなか離してくれなくて…うん、もちろん、わしも、…離れたくなかったけど…でもここの壁はきっと薄すぎてどうも気になってしまう。
とは言っても実は両隣には誰も住んでいないのは知っている。
わしらが卒業したらここは壊して新しいマンションを建てるそうだ。その寸前に無理を言って住まわせてもらったわけだ。
隣にはいないが下にはいるはずだし…
それはともかく、日曜の朝にぐたぐだと布団の上で過ごしているわけなんだが、三成は昔からわしの背から抱きしめるのが落ち着くみたいでな。
今もそうなんだが…いつもなぜかわしの腹に手を回してさすったりつまんだりするんだ。
昔と変わらないその癖に微笑ましく思いながらもなぜそうするのかずっと気になっている。
「三成、今日はどうしようか?天気もいい…し出掛けるか?」
「……にく……」
「え?」
「…ふに…」
「何だって?」
寝ぼけているのか、三成はわしの首筋に顔を押し付けて腹を触りながらぼそぼそとわけのわからないことを言っている。
ちょ、脇腹はくすぐっ、た、
「みつ、なりっ、くすぐったいからやめ…」
「黙れ。抗うな。私の幸福を奪うな」
「幸福っておまえ…っ」
寝ぼけているのかと思いきや、はっきりとそう言う三成がしあわせだなんて思ってくれることは、しかもわしと共にあることで思ってくれるのはそれは泣きたいほど嬉しくて仕方ないが、この腹をさすったり脇腹をつまんで何をしたいのかつまんだ部分を何度かつまみ直すのは何なんだ!?
あっ、首を嗅ぐな噛むな舐めるなっ!
決してその行為じたいが嫌なわけではないんだが跡が残ったら面倒じゃないかとやめさせようとした時、三成の片手が胸の方にまわってきた。
「いっ、た…!」
腹はくすぐったいほどに優しく触るくせになぜか胸は容赦ない力で掴まれる。
そんなに搾るように掴んだってわしの胸からは何も出ないからな!
おまえ、この間の牧場体験で牛の乳搾りに挑戦して牛を暴れさせて大変だったじゃないか!
「わっ」
そうこうしているうちに体をひっくり返されて乗られて三成の全体重の重みを感じる。
わしは、この三成の重みが好きだ。
あ、いや、ほら、何だか安心する、…んだ…
ってこら!胸に顔を擦りつけるのはどういう意図なんだ!何が楽しいんだ?
「みつなり、せっかくの天気なのにでかけ、ないのか?」
わしはそれでも胸に顔を埋めるようにしている三成の綺麗な髪を撫でると、三成はまた『にく…』と呟いた気がする。
「肉が食べたいのか?焼肉でも行くか?」
三成が肉を食べたいなんて言うのは珍しいなぁ。
ちょうど安いチェーン店が最近近くにできたばかりのはずだ。
「…ふに…」
「何だって?」
同じセリフをさっきも言わなかったか?
あ、また脇腹をつままれた。なんなんだそれは。そんなにわしのは腹はつまみやすいのか!?ちゃんと鍛えているのに!
「ひゃっ」
急に乳首を舐めるな!昨夜もさんざん吸ったじゃないか!
「ちょ、みつ…んっ」
いかん。せっかくの天気のいい日曜日、このままでは布団から出ることなく一日が終わってしまいそうだ。
けれど、そんな日常も。
三成と共にあるならば、なんて幸福な。
胸に、腹に、昨夜残された赤い跡をたどるようにまた上書きされ、足を開かされて腿の内側を食まれる。
今生の三成の手順はいつもだいたい同じだ。
あちこちにしっかりと噛み跡を残してからローションでしつこいくらいに焦らさ、あ、いや、慣らされる。
わしはその間に3回も達してしまう時があって正直つらい。
三成が本当は優しいことは昔から知っていたが、わしばかりにイかせてわしがどうしようもなく欲し…、がるまで指や視線や言葉で……そうしてようやくなわけだが三成がそこまで耐え症があるとは知らなった。
昔は場所も時も構わずにいつでもどこでも突然突っ込ま…
それはそれで大変だったが3回もイかされたあとに灼熱の塊みたいな三成が入ってくる時はたまらなく良すぎ、…て、…
と、突然三成が顔を上げてわしの不埒な想いを見透かすように眼前にその綺麗な瞳を見せた。
400年経っても、わしは三成に見つめられるとそれだけで胸が高鳴り魂の奥底から性懲りもなく熱が湧き上がる。
どうしようもなく手を伸ばしたくなって、今はこの手を伸ばしてもいいのだと、願いに素直に三成の顔に手をのばして。
その澄んだ翠の瞳が鋭くわしを射る。
ああ、おまえはなぜそんなにも美しくて眩しいんだ。
「家康。貴様、左の太腿のにくが2ミリ減っている。元に戻せ。なんならあと4ミリ増えても構わん」
「え……?」
にく……?
……………あ。