続・左近の日常(脱却し損ねた)

「三成様ー失礼しまーっす!…っと失礼しました!」

俺はいつものごとく刑部さんから預かってきた言付けを三成様に伝えようと部屋を訪れて、もう何度目かわからない失態をおかしちまった。
三成様の許可を得ずに障子を開けてしまってすぐに閉めたわけだけど、だってまだ朝と言っていい時間すよ!?いやいやホントは朝一番な時間だってのに三成様ときたらまたも家康を押し倒して…
え?まさか昨夜からずっととか?さすがにそれはないっすよね~
と、何やら中から三成様の荒れた声が聞こえて…

「何故拒む家康!」
「いや、ちょっと今誰かが来たような気がしてな」
「何だと!?急ぎの伝令だったらどうするのだ!」

突然勢いよく障子が中から開けられて、膝をついている俺は焦って上を見上げると三成様が…あ~やっぱ今日もかっこいいっす!

「誰もいないではないか!」

え?
いや、そりゃ三成様の視線は高すぎて床に近い俺は目に入らなかったかもしれないけどそれってひどくないっすか!?

「…そうだったか?」

ふと、床の上に転がったままの家康と目が合った。

「ワシの勘違いだったかな。ははは」

え!ちょっと!今、目合いましたよね!?

「くだらないことを言っていないで続きをするぞ!」
「ちょ、三成っ…障子はちゃんと閉めて…」

あ、また家康と目が合った。っていうか確実に俺の存在に気付いてますよね!?

「ふんっ。松の木しかないのに何を言う」
「お前なぁ…っ!」

三成様は本当に障子を開けっ放しのままで家康の首に噛りついた。
あのー…ど、どうしよう!?
刑部さんからの言付けはひいては半兵衛様からの言付けでもあるんすけど…!?
この場に割り込んでいってでも伝えないと半兵衛様はもちろん三成様に叱られるよな!?
俺は思い切って声をかけることにした。

「あのー…!三成様!」

しかし三成様はなんというか家康の首から肩にかけて跡を残すことに夢中なようで俺の声になんて気付きもしない…!
が、家康はちらりと俺に視線を投げてきた。
何を言いたいのかはわからないがとにかく俺のことが邪魔そうだ。
そりゃそうっすよね!ふたりの蜜月を邪魔されたくないっすよね!
けどなぁ!俺だって三成様に言付けを伝えるっていう責務があるんすよ!

「み、つなり…っ、その、今日は…三成とワシの…」
「わかっている。結婚記念日だろう」
「え?」

え?三成様?
そうだったんすね?なぁんだ、それなら仕方な…くないっすよ!

「そうだったか?」

いやいや家康もそんな今日は日曜日なのに土曜日だったか?みたいなテンションで言ってる場合じゃないっすよね!?もっとこう!
え?でも三成様が言うならホントに結婚してたんすか…?

「よもや忘れたわけではあるまいな?」
「忘れるわけがないだろう!お前と…一緒になって13年…本当に幸せな日々を過ごせていることを感謝しているよ」
「貴様を私のものにするまでの血の涙の日々…忘れはしない。二度と離さないと誓ったあの日を。貴様をこの腕に抱き初めて貫いたあの日を…」
「ははっ、初夜は本当に大変だったなぁ」
「貴様が慣れた風を装って私を煽るからだ!」
「うん、そういうつもりではなかったんだがな?お前が勝手に…」
「家康。二度と私から離れるな。たとえ死が別れとなろうとしても、私はそれを認めない。貴様の魂は地獄の果てまで私のものだ」
「…うん…お前から離れたりしないと、改めて誓うよ。三成、ワシはお前と共にあると、この魂に誓おう」
「家康…」
「三成…」

あれ、何か視界がぼやけて…って何すかこの展開!
と、気付けば二人はそのまままたいちゃいちゃするのかと思いきや皆にお礼をとかなんとか言って部屋を出ていこうとして。
三成様は最後まで俺に気付かずに部屋を出て廊下を歩き始めたが、半歩後ろを歩いていた家康が立ち止まって振り返り、俺としっかり目を合わせた。

「ああ左近。お前、出番間違えているぞ」
「は?」
「今日はBASARA”3”の発売日13周年なんだ。お前はまだモブ武将だから」

え?俺モブ?
あの家康がいつもの笑顔でそんな辛辣なことを?

「何をしている家康。行くぞ」
「ああ、すまない。今行く」

両目でウインクのような余裕を俺に見せた家康は三成様の隣に並ぶべく小走りで追いついた。

「貴様誰と話していたのだ。また薄汚い獣どもと会話していたなどと言ったら斬り捨てるぞ」
「ははは、いや、何だろうな。左からの迷い子、かな?」
「何をわけのわからないことを言っている。大御所だからといって腑抜けるな」
「ああ、わかっているさ。…三成、これからもよろしくな」
「ふん、当たり前のことを言うな!」
「ふふっ…三成…」
「家康―――」

それから俺にはもう二人の会話は聞こえなくなった。
あーあ、何だかわかんねぇけどこっちの三成様と家康もよろしくやってるってことっすね!
三成様が幸せならそれでいいんすよ!俺は!
………で。
俺はどうやって俺がモブじゃない世界に帰ったらいいんすかーっ!!?