みつなりさんによるいえやすさんのからだのはなし

私は思うのだ。あれは毒だ。私を蝕む毒だ。知らぬうちに入り込んで全身に隙間なく浸透していく毒だ。あれを見ていると噛みつきたくて仕方ないのもそのせいだろう。毒を持つ花は自らを美しく飾り立てて誘い、その毒で獲物を仕留めるのだろう?ふ、だが私はどんなに毒に蝕まれても仕留めるのは私の方だ。初めて奴を抱いたのは私の初陣の時だった。私の遅すぎる、いや、秀吉様と半兵衛様に認められ満を持しての初陣に無事勝利を得られた時、この私も血が滾って仕方なかった。どうしようもなく抑えられないその衝動を持て余していた時に傍にいたのが家康だった。大丈夫か、と私を覗き込む奴の顔を見た時、これは私の獲物だと思った。迷うことなくその甲冑を斬り捨てて肌に噛みついた。家康は抵抗しなかった。だから私は滾る衝動のままに貫いた。奴も戦の後だ。私を求めていたのだろう。痛そうにはしていたが拒絶はしなかった。そんな家康に私は何度も本能のままに腰をうちつk、何?細かい描写はいらないだと?ふん、まあいい。なんだって?傍にいたのが奴以外だったらどうしていたかだと?そんなことあるわけがないだろう。私の傍にいるのは家康と決まっているのだ。それから私は戦のたびに奴に全てをぶつけるようになったが、そのうち戦も関係なく奴の部屋に行くようになったのだ。だからあれは毒だ。だがあれも始めからそういう毒を持っていたわけではないだろう。出逢った時など奴は小煩いだけの弱い仔狸だったからな。しかし秀吉様に敗れた身でありながら秀吉様にも半兵衛様にも認められ重宝されていたことは、始めは納得いかなくても共にあることで理解できた。いまだ初陣に立てなかった私が私より年下でありながらいくつもの戦場を切り抜けてきた奴を、私は認めていたのだ。奴が来てから間もなく初陣を果たした私は滾った血の衝動を抑えられなく、大丈夫かと私の顔を覗き込んだ奴を背後の木に押し付け、何?それは聞いただと?そうか。それから私が家康を抱くようになってから奴は遅い成長期がきたように成熟していった。急激に伸び始めた骨にか、異様に鍛え始めた筋肉にか知らないが毎日のように褥を共にしていた私は夜中に奴が痛みに呻くのをよく見たものだ。痛むらしい足に口付け、それは膝から腿へと、それから、繁みを掻き分けて震える奴を通り過ぎ奥のひくつくあn、何?細かい描写はいらないだと?そうか。ちょうどその頃だったか、あれは忘れもしない、奴が槍を捨て秀吉様のように拳ひとつで戦場に立つと言った時には言いようの知れないものがこみ上げて何度も殴った。更には鎧兜も脱ぎ捨て戦装束を新たにした時、私はその姿に憤慨しその日は夜が明けても登城する寸前まで奴を床に沈めた。何故あのように首も腹も晒して戦場に立とうというのだ。いや、もともと腹は出していたのだったか。奴の腹をよく見たことがあるか?たしかに正面から見れば腹は見事に割れている。だが腰回りなどはいっそ仔狸だった頃よりも柔らかいのだ。戦場での拳を振るう時の腰の捻りを見たことがあるか?あれは敵の目を奪ういやらしさだ。背後から見ればあの隙間から手を入れ尻を揉みたくなるだろう。私以外の誰にもそんなことはさせないがな。胸もそうだ。筋肉がつきすぎないように私が毎日丹念に揉みしだいてきた成果であのように私の手にしっとりと馴染む硬すぎずしかし弾力がありそれでいて柔らかささえ感じる豊かな胸へと成熟した。私が今の家康の身体を作ったと言っても過言ではない。なにしろ奴が16の時から3年の間私が育ててきたのだ。それなのにあれは何だ!奴が秀吉様と私を裏切ったあとに手に入れたという第二衣装、あれは一体何なのだ!私を愚弄しているのか!あのような淫らな衣装で私好みに作り上げた身体を使って東の奴らを拐かすとは何たる卑劣!あれを裏切りと言わず何と言えばよいのか!ああそうだ。私は奴を信じていたのだ。夜に限らず閨に限らず奴の肌を暴く時、いつだって従順だったあれを。私に組み敷かれ私の背に腕を回し切なげに私の名を呼ぶあれを。私を離すまいと締めつける奴のなかは熱く貪欲に私に絡みつきこの上ない悦楽だった。縛り上げて吊るした時の戸惑いの表情と首筋から胸の谷間を流れる汗は私を高揚させた。脇を撫で腹を舐めると震える身体は私の全てを受け入れ抵抗など微塵も見せず平時は柔らかなあの声が熱と色を持ってただ私の名を呼ぶ。それだけで私はひどく幸福だった。あの幸福に溺れていっそ私に死ねというくらいに。あれは私のものなのだ。そうだろう?私はあれのおかげで人の欲を知った。心を知った。恋を知った。そうだ、認めよう。あれは私の初恋だ。そんなに驚くな。今だからこそ打ち明ける。私は奴を憎くてたまらないがあの肌が、身体が恋しくてたまらないのも認めよう。一人寝の寂しさと寒さを知ったことも打ち明けよう。私には花や鳥を美しいと思える情緒はないが奴の顔は愛らしいと思える。憎らしいほどに凛とした眉と額、それでいて成長しても丸みを帯びたままの噛みつきたくなるような触れれば柔らかな頬、苛つくほどの陽のような笑顔、煩わしい陽の光を湛えた大きな瞳。ああ、何故奴の瞳はあんなにも抉り出したくなるほどの甘い色をしているのだ。あの瞳は私だけを見ていると思っていたのだ。否、私だけを見ていなくてはいけなかったのだ。奴があちこちに愛嬌と毒と淫らな衣装姿を振り撒いたせいで、今や西も東も誰もかれもが家康を見、家康の名を呼ぶ…!あれは私のものなのだ。私だけが家康の名を呼んでいいのだ!そうだ、この世には家康と、奴を殺す私だけがいればいい…!聞いているのか、刑部。刑部!?行くな!私の元から去るなーーッ!