うさ耳

「家康、その頭はなんだ」
「ん?」

城の前の広場に何やら人が集まっているところへ三成が通りがかったのはただの偶然だった。いつもの三成ならば人の多いところを避けるものだが、うっかり家康の姿を見つけてしまったがために近寄っていってしまった。
そして、家康の頭にあるぴんと立つ茶色の動物の耳のようなものを指摘した。

「ああ、今年は卯の年だからな。皆でうさぎの耳を模したものでもつけて餅つきでもしようかということになってな。ちょっと待ってくれ」

家康は楽しそうにそう言って人が集まっている中に走っていったのだが、そのいつもの衣装のフードにも耳がついていて、三成は”そんなに耳ばかりつけて貴様は何がしたいんだ…!”と意味もなく苛ついてみた。
すぐに戻ってきた家康が、

「ほら、三成の分もあるんだぞ」

と言って持ってきた白いたれ耳を三成の頭に乗せた。

「うん。やっぱり三成は何でも似合うな」

満足そうに陽だまりの笑顔で言った家康に三成の中の何かがはじけ、三成は家康の手を取ると近くの木陰まで引っ張っていった。

「三成っ、急にどうしたんだ!?―――っ」

三成はかろうじて人の集団からは見えそうで見えなさそうな木に家康を押し付けると、唐突に唇を重ねた。

「んんっ―――」

驚いた家康はそれでも一瞬受け入れそうになったが、ここがどこかを思い出し三成の肩をなんとか押し返して自分から引きはがした。

「貴様っ私を拒むのか!」
「違う!わしだって…いや、そうではなくて今はだめだ三成。その、あとで…な?」

小首を傾げて上目遣いで三成を見つめる家康の頭のうさぎを模した耳は、ただの飾りのはずなのになぜか先が少し恥ずかしそうに垂れている。
もしもその耳も貴様の一部ならば私のものだ、と思った三成はその耳の先に口づけてみた。

「んっ」
「…おい、家康」
「な、なんだ…」
「何故反応する」
「…わからん…」

うっすらと頬を染めて顔を隠すように三成の肩に額を押し付けた家康の腰を片腕で抱きながら、三成は目の前でぴくぴく動いているその頭の”飾り耳”を引っ張ってみた。

「いたたたっ、痛いぞ!三成っ」
「…家康…この耳、くっついているぞ」
「どういうことだっ!?」
「私が知るか。とりあえず試させろ」
「何を、…っ、あっ、みつなり!ばかっ、待て、ちょ…っ!」

いなくなってしまった主を探していた忠勝が主を見つけたもののどうしたものかと困って二人がいる木陰と皆が準備している間に立ちはだかっているのを、遠くから大谷がほくそ笑み眺めていた。

「徳川を困らせることほど楽しいことはないわ。ヒッヒッヒッ」