涙の減価償却

ぽろ、ぽろ。
身体の内に熱い欲を放たれた家康は、目尻から大粒の涙を落とした。
それはシーツに染み込んでじわりと広がる。
三成の指の背が、そっと掬うようにその涙を拭った。
掬った涙をじっと見つめている三成を、家康は情交のあとの腑抜けた顔でぼんやりと見上げた。

「三成…?何をしているんだ…?」

瞬きもせずに濡れた指を見つめている三成を見上げて、よくできた彫刻のようで美しいなぁと家康が呆けていると、その顔が近付いてきて頬をぺろりと舐められた。

「貴様の涙は資産だ。手に入れた私は償却せねばならん」
「は?」

ベッドの上で今聞くにはなんだかそぐわない単語が聞こえたような気がするが聞き間違いだろうか。
なにしろまだ三成のものが家康のなかに入ったままだ。
そういえば三成は数字に強いからと経理部に配属されたんだったか?とおぼろげに思いながら。

「…ちなみに何年で償却するんだ?」
「そうだな…265年といったところか」
「はあ…いくらなんでもわし、そんなに生きていないと思うが」

どういう計算でそうなったんだと、面白いなぁと思いながら家康は複雑な面持ちで目を細めた。
縋るように三成の首にまわしていた手をほっそりとした頬へとおろして。

「なぁ三成…わしの価値はだんだん下がって最後にはなくなるということか…?」

薄く笑んでそう言うと、頬にのせていた手を乱暴に強く掴まれてシーツに押し付けられた。
三成の視線は鋭く、熱い。

「馬鹿者。完全に私のものになるということだ。永劫に。誰にも奪わせない。貴様自身にもだ」

家康自身にも、とはどういう意味か。
家康にはわからなかったが、今すぐ、にではなく、265年も待つというのが三成にしては意外で、なぜか胸がしめつけられる。
しかも、声は穏やかだったが押さえつけられた手首は痕が残りそうなほどに痛い。
絶対に離さない、というように。

じわりと、滲みそうな涙を耐えて。
微笑んだ。

「大丈夫だよ、三成。わしはここにいる。おまえのそばに」

降ってきた口づけは、ひどく優しくて。
ついに耐えきれずに涙が落ちた。

ゆっくりと、気の遠くなるほどの時間をかけて、三成のものとなる。
それはなんと甘やかな瞬間だろうか。
ぽろ、ぽろと。
涙が落ちるたびに三成に支配されていく。
ひとつになっていく。

未来永劫に。
もう、離れることはない。